薬物依存症は、違法薬物や処方薬などの薬物を使用することへの強い欲求(渇望)がコントロールできなくなり、使用をやめられない状態が続く病気です。吉川市の中村病院では、薬物依存症の診断・入院治療に対応しています。「やめたいのにやめられない」「家族が薬物を使用していて困っている」という場合は、一人で抱え込まずにご相談ください。
当院の薬物依存症における特徴
入院による総合的な治療体制
薬物依存症では、解毒(離脱症状への対応)から始まり、生活リズムの再構築、再発防止に向けた取り組みまで、段階的な入院治療が有効です。当院は180床の入院施設を持ち、精神科専門医が入院での治療管理を行います。
入院後は解毒から始まり、病棟内での規則正しい生活・作業療法などのリハビリプログラムへの参加を通じて生活リズムを整えます。その後、動機づけ面接・疾病教育・内省を通じて再発防止策を立て、自助グループへの参加支援も含めた環境調整を行います。医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士が連携した多職種チームで、一人ひとりの回復を支えます。
本人の回復意欲を大切にした治療方針
薬物依存症の入院治療は、原則として本人が入院を希望する場合に適応となります。強制ではなく、本人の回復への意欲を大切にしながら治療を進めることが、長期的な回復につながります。
ただし、幻覚妄想状態・強い離脱症状・自傷他害のおそれがある場合など、判断能力が著しく低下していると医師が判断した場合は、本人の同意がなくても入院が可能な場合があります。緊急の対応が必要な状況では、まず医療福祉相談室にご連絡ください。
精神保健福祉士による地域・支援機関へのつなぎ
薬物依存症からの回復には、医療だけでなく、地域の支援機関・自助グループとの継続的なつながりが重要です。当院の精神保健福祉士が、退院後の生活環境の整備・支援機関への橋渡しを行います。「退院後の生活が不安」という方にも、具体的なサポート体制を整えてから退院を迎えられるよう努めます。入院から退院後の生活まで、切れ目のないつながりを大切にすることが当院の方針です。
薬物依存症とは
薬物依存症は、薬物使用への強い衝動(渇望)がコントロールできなくなり、使用し続けることをやめられない状態です。使用をやめようとすると強い離脱症状や渇望が生じ、日常生活・仕事・家族関係に深刻な影響を及ぼします。
「一度使うだけなら問題ない」と考える方もいますが、決してそうではありません。一度使って依存に至らなかったら、「依存していないから次使用しても大丈夫だろう」と考えます。すると罪悪感もなく、二度、三度と使用を続けることになります。こうして気づいた時には依存が形成されていて、薬物から抜け出せなくなる、というのはよくある依存症に至るパターンです。
対象となる薬物には、覚せい剤や大麻、麻薬(コカイン、ヘロイン、アヘン、MDMA、LSDなど)などの違法薬物のみならず、以前は「脱法ドラッグ」などと言われていた違法ドラッグなどがあります。また、向精神薬(睡眠薬・抗不安薬)、ニコチンなどの違法ではない薬物や、最近では若者の間で市販薬(コデイン、カフェイン、エフェドリン)などのオーバードーズ(過量服薬)も問題となっています。このように、薬物依存症の対象となる薬剤は実に多岐にわたります。
依存症は「意志が弱い人間がなるもの」ではなく、脳の報酬系の変化によって起こる医学的な病気です。使い続けることで脳の機能が変化し、薬物なしでは普通の状態でいられなくなります。適切な治療によって回復することができます。「こんな自分はもうダメだ」と思わずに、治療の入口に立つことが最初の一歩です。
薬物依存症の症状
薬物によっても特徴が異なりますが、薬物依存症の症状は、身体的な側面と精神的な側面の両方に現れます。
薬物への強い「渇望」が繰り返し起こり、使用量や頻度が増える(耐性)、やめようとしてもやめられない(コントロールの喪失)、使用のために仕事・家族・友人との関係などの大切なものを犠牲にする、薬物使用をやめると「離脱症状」(不安・不眠・発汗・嘔吐・幻覚など)が現れる、といった症状が特徴です。
また、幻覚・妄想(特に覚醒剤精神病など)や抑うつ気分、精神運動興奮などの精神症状が現れる場合もあります。薬物の種類によって離脱症状や合併症の内容は異なるため、医療機関での管理のもとでの治療が重要です。依存症が進行するほど、症状は複雑になります。早い段階で専門家に相談することが、回復への近道です。
薬物依存症の原因
薬物依存症の発症には、脳内ドーパミン系の変化、遺伝的な要因、幼少期のトラウマ体験やストレス、環境的な要因(仲間からの誘い・入手しやすさなど)が複合的に関与しています。
「一度使ってみただけ」から依存に至るまでの速さは薬物の種類や個人差がありますが、いずれの薬物でも継続的な使用は依存につながるリスクがあります。依存症は「意志が弱い証拠」ではなく、脳の変化による医学的な問題です。多くの方が「やめたい」という気持ちを持ちながら苦しんでいます。その苦しさを一人で抱え込まないでください。
薬物依存症の診断
診断は、精神科専門医による問診をもとに行います。いつ頃からどのような薬物をどのくらいの頻度で使用しているか、やめようとしたときにどのような状態になるか、日常生活への影響などを確認します。正直にお話しいただくことが、適切な治療につながります。
医療機関は警察機関ではありません。受診の内容が捜査目的で外部に提供されることはありませんので、安心してご相談ください。「受診することへの不安」があっても、まずはお電話だけでも構いません。
薬物依存症の治療
薬物依存症の治療は、以下の流れで進めます。
まず解毒の段階では、離脱症状や合併症(幻覚・興奮・身体症状)に対して、必要に応じて抗精神病薬などの薬物療法を行いながら安全に管理します。離脱症状は薬物の種類によって異なりますが、医療管理のもとで安全に乗り越えることが大切です。
次に生活リズムの再構築として、病棟内での規則正しい生活・作業療法など、入院環境のなかで身体と生活リズムを整えます。規則正しい生活習慣を取り戻すこと自体が、回復の重要なステップです。
そして再発防止として、動機づけ面接を通じた疾病教育・内省を行い、自分の依存パターンを理解します。「なぜ使ってしまうのか」を理解することが、再発を防ぐための力になります。退院後の生活環境の整備や、自助グループへの参加支援も行います。残存する症状に対しては、必要に応じて薬物療法も継続します。
回復に向けて
薬物依存症の回復は、入院治療が終わってからも続くプロセスです。退院後も外来通院を継続し、再発の兆候を早期に察知することが大切です。再使用してしまっても、それは回復の終わりではありません。「やめたくてもやめられない」ことが薬物依存症の症状なのですから、症状が改善していないのであれば、むしろ積極的に治療を継続するべきサインです。再び治療につながることで、回復の歩みを再開できます。アルコール依存症同様、薬物依存症も「完治」する病気ではありません。しかし、「寛解」状態を維持し、依存症ではない人と同じように生活することは十分可能です。一喜一憂せずに、長期間伴走するつもりで治療を継続していくことが大切なのです。
精神保健福祉士が地域の支援機関・自助グループへのつなぎを継続し、孤立しない環境をつくることが長期的な回復に欠かせません。回復はひとりではなく、周囲とのつながりのなかで育まれるものです。
よくある質問
- 薬物依存症は意志の問題ですか?
- 意志の問題ではなく、脳の変化による医学的な病気です。「やめようと思えばやめられる」という段階を超えたとき、それが依存症です。自分を責めたり、意志の強さでどうにかしようとしたりするより、専門家に相談することが回復への確かな近道です。
- 受診すると警察に通報されますか?
- 医療機関には守秘義務があり、原則として受診の内容を捜査目的で外部に提供することはありません。違法行為であったとしても、治療目的に受診した患者さまには治療を優先することが望ましいため、通報はしません。一部の薬剤には都道府県知事への通報義務がありますが、これも警察への通報義務ではありませんし、一度の使用のみで通報することはありません。原則として治療が優先されますので、安心してご相談ください。
- 家族が薬物を使っているようですが、本人が受診を拒否しています。
- まずはご家族だけで相談することが可能です。どのように対応するか、受診につなげる方法などについてアドバイスします。本人が拒否していても、ご家族の動きが状況を変えることがあります。
- 入院期間はどのくらいですか?
- 症状の程度や回復の状況によって異なります。解毒が完了し、生活リズムが整い、再発防止の取り組みが進んだ段階で退院を検討します。医師・精神保健福祉士と相談しながら、適切なタイミングを判断します。
- 退院後はどのようなフォローがありますか?
- 外来通院を継続し、必要に応じて訪問診療・訪問看護の活用もできます。自助グループへの参加支援も精神保健福祉士が行います。再使用してしまった場合、申し訳なさやばつの悪さから受診に消極的になってしまう方も少なくありません。しかし、「やめたいのにやめられない」のが依存症の症状です。「風邪をひいて咳が出るから受診してはいけない」などと言う医療機関がないことと同じで、「やめたいのにやめられない」と症状が改善していないのであれば、むしろ積極的に治療する必要があるわけですから、遠慮なく受診してください。再使用やそれに対する対応をともに考えることも、治療の一過程です。
- 薬物依存症の家族はどんなことに注意すればよいですか?
- ご家族が薬物依存症になっている場合、お金を渡してしまう・問題を隠してあげるなど「共依存」と呼ばれる状況になっていることがあります。ご家族自身も苦しんでいる場合が多く、ご家族への対応方法についてもアドバイスしています。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
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