アルコール依存症は、飲酒のコントロールが失われ、飲まずにいられない状態が続く病気です。「やめたいのにやめられない」「飲まないと手が震える」「お酒のことで家族に迷惑をかけている」という状態が続いている場合、それはアルコール依存症のサインかもしれません。吉川市の中村病院では、アルコール依存症の診断・治療を行っており、セリンクロ投与可能施設として最新の薬物療法にも対応しています。
当院のアルコール依存症における特徴
セリンクロ投与可能施設として最新の薬物療法に対応
当院はセリンクロ(ナルメフェン)の投与が可能な施設です。セリンクロは飲酒量を減らすこと(減酒)を目的とした薬です。断酒を目標とするだけでなく「まず飲酒量を減らすこと」から始めたいという方にも有効な選択肢です。
従来の断酒一択の治療方針ではなく、患者さまの状況・意欲・生活スタイルに合わせた柔軟な治療方針を取ることが、当院の特徴のひとつです。「アルコール依存症ではないと思うけど、飲酒量が多くて健康問題に不安がある」「完全にやめるのは難しい」と感じている方も、まずはご相談ください。治療の入口が広いほど、回復への第一歩を踏み出しやすくなります。
精神保健福祉士による自助グループ・地域サービスへのつなぎ
アルコール依存症の回復には、医療だけでなく、自助グループ(断酒会・AAなど)や地域の支援機関との関わりが重要です。当院の精神保健福祉士が、断酒会・AAなどの自助グループへの参加案内や、地域の支援サービスへのつなぎを行っています。
「一人で断酒を続けるのは不安」という方には、同じ経験を持つ仲間とつながることが回復の大きな力になります。専門家と地域のネットワークを組み合わせた支援を行います。孤立した状態では回復が難しいことが多く、「つながり」を大切にした支援が大切です。
入院対応と包括的な治療体制
アルコール依存症は外来での治療が可能な場合もありますが、離脱症状が重篤な場合や、外来治療では回復が難しい場合、幻覚や妄想、抑うつ気分、不安、精神運動興奮などの精神症状により日常生活に支障が出ている場合などでは、入院治療が必要です。当院は180床の入院施設を持ち、精神科専門医が入院での管理と治療を行います。今後、入院プログラムの導入も検討しています。
アルコール依存症とは
アルコール依存症は、飲酒のコントロールが失われ、飲み続けないといられない状態が続く精神疾患です。「意志が弱い」「自分勝手」という問題ではなく、脳の報酬系に関わる病気です。
飲み続けることで脳と身体がアルコールに依存するようになり、やめようとすると離脱症状(手の震え・発汗・不眠・不安など)が現れます。依存症は進行性の病気であり、放置すると身体的・社会的な問題がどんどん深刻になります。早期に治療を始めることが大切です。「自分はまだ大丈夫」と感じていても、依存症は自然には良くならない病気です。気になる症状があれば、早めに専門医に相談することをお勧めします。
アルコール依存症の症状
アルコール依存症では、「飲酒量の増加→耐性→さらに飲酒量増加→精神依存→飲酒量のコントロール喪失→身体依存→離脱症状→離脱症状のために飲酒を止められなくなる」という悪循環が起こります。
- 耐性の形成(飲酒量の増加): 飲酒が習慣化されて量が増えると、耐性が形成されます。いわゆる「お酒に強くなってきた状態」で、同じ量では酔えなくなるため、満足を求めて徐々に飲む量が増えていきます。
- 精神依存(コントロールの喪失): 飲酒量が増えることで、強い飲酒欲求が抑えきれなくなり、お酒をコントロールできなくなります。
- 身体依存: 耐性・精神依存が形成され、飲酒習慣が長期化すると、今度は「身体がお酒を欲する状態(身体依存)」へと進行します。
- 離脱症状と悪循環: 身体依存が形成されると、お酒を切らしたときに手の震え・不眠・イライラなどの「離脱症状」が現れ、その苦しさから逃れるためにまた飲酒し、さらに依存が強固なものになる、という悪循環に陥ります。
こうなると、自力で止めるのは困難なため、専門医による治療が必要です。
離脱症状とは、具体的には以下のような特徴があります。
- 離脱症状とは: 身体依存が形成された状態でお酒を断つと、体内のアルコールが減少するにつれて心身に激しい拒絶反応(離脱症状)が現れます。
- 小離脱(数時間後の症状): 断酒後すぐに現れる症状で、手の震え、大量の発汗、強い不安感や不眠のほか、ときに全身の「けいれん発作」を起こすこともあります。
- 大離脱(数日後の重症期): 断酒後3~4日目に現れる重篤な状態で、激しい興奮、ないものが見える幻覚(虫や小動物の幻視など)、意識障害を伴う「振戦せん妄(しんせんせんもう)」が起こります。自律神経の顕著な乱れを起こすため、高熱や脱水症状、循環器への負荷により、適切な医療処置を受けないと、生命を脅かすほど重篤化することもあります。
その他アルコールが及ぼす影響として、肝機能障害・胃炎・末梢神経障害・急性膵炎・慢性膵炎・認知機能の低下など身体的な問題も生じます。社会的な影響として、職場での遅刻・欠勤、家族との関係の悪化、経済的な問題なども、依存症が進行した結果として現れることがあります。
アルコール依存症の原因
アルコール依存症の発症には、飲酒習慣の継続・遺伝的な要因・心理的なストレス・職場環境などが複合的に関与しています。「飲み続けた結果として脳が変化する」という側面が大きく、「意志の問題」だけでは説明できません。
ストレス解消として飲み始め、いつの間にかコントロールが難しくなっていたというケースも多くあります。「自分はまだ依存症ではない」という否認も依存症の特徴のひとつです。「ひどい人間ではないが、病気になった人間だ」という視点から治療に向き合うことが、回復の大切な出発点になります。
アルコール依存症の診断
診断は、精神科専門医による問診をもとに行います。いつ頃からどのくらい飲んでいるか、飲酒をやめようとしたときにどのような症状が出るか、飲酒が仕事・家族関係に与えている影響などを確認します。血液検査で肝機能・栄養状態なども確認します。
「アルコール依存症と診断されることへの不安」「家族に知られたくない」という方も多いですが、まずは受診という一歩が回復のスタートになります。診断名がつくことで、支援や制度を活用できるようになることもあります。
アルコール依存症の治療
アルコール依存症の治療では、身体依存が形成されている可能性がある場合には、まず離脱症状を安全に乗り越えることが最初のステップです。重篤な離脱症状(けいれん・幻覚など)が予想される場合は、入院での管理が必要です。
また、アルコール依存症の治療の目標は「断酒の維持」です。ただ、「いきなり断酒と言われても困る」「断酒するくらいなら治療したくない」「そこまでするほど悪い状態ではない」と考える方も少なくありません。状態次第ではありますが、「断酒」を目標とすることが難しい場合には、医師と相談のうえで「減酒」という選択をすることも可能です。特に依存症の方の中には「否認(自分は依存症ではないと考えている)」の強い方も大勢いらっしゃいます。その人の置かれている状況を踏まえ、治療方針はその方の段階に合わせて、専門医が適切かつ柔軟に考えます。
また、アルコールの有害性やアルコール依存症とはどのような病気かといった知識の習得や、自身の考え方の癖やそれを踏まえた治療の方向性など、日々の診察や様々なプログラムを通して洞察を深めていくことが大切です。
薬物療法では、断酒補助薬(アカンプロサート・ジスルフィラム)や、飲酒量低減薬のセリンクロが使用されます。患者さまの目標(断酒・減酒)や状況に応じて、適切な薬を選択します。
精神保健福祉士を通じた自助グループ(断酒会・AA)への参加も、長期的な回復において非常に重要な役割を担います。医療と自助グループの組み合わせが、回復の継続につながります。アルコール依存症の回復は一人では難しく、周囲とのつながりがとても重要です。
当院では今後、入院プログラムの導入を検討しています。外来での治療を続けながら段階的に回復を目指す方から、入院での集中的な治療が必要な方まで、状況に応じた対応が可能です。治療方針については医師と相談しながら、患者さま自身が納得できる形で進めていきます。
回復に向けて
アルコール依存症の回復は長期的なプロセスです。「飲まない日が1日続いた」ことも、大きな一歩です。再飲酒してしまっても、それで終わりではありません。治療に戻ることができれば、回復の歩みを再開することができます。アルコール依存症は「完治」する病気ではありません。しかし、「寛解」状態を維持し、依存症ではない人と同じように生活することは十分可能です。一喜一憂せずに、長期間伴走するつもりで治療を継続していくことが大切なのです。
ご家族の方も疲弊されていることが多く、支援が必要な状態になっていることもあります。無意識のうちに共依存(家族が依存症の行動を手助けしてしまう関係)が生じていることもあります。ご家族だけでの相談も受け付けていますので、一人で抱え込まずにご相談ください。
よくある質問
- アルコール依存症は意志の問題ですか?
- 意志の問題ではなく、脳の病気です。飲み続けることで脳の報酬系が変化し、飲まずにいられなくなります。「やめようとしてもやめられない」のは病気の症状であり、意志の強さとは別の問題です。
- 断酒しかありませんか?飲酒量を減らすだけではダメですか?
- 依存症の程度や状況によって異なります。当院ではセリンクロ(飲酒量低減薬)を処方できるため、まず「飲酒量を減らすこと」を目標にした治療も可能です。状態次第でもありますので、専門医と相談のうえで、現実的な目標を設定しましょう。
- 家族が依存症かもしれません。本人が受診を拒否しています。
- ご家族だけでの相談を受け付けています。受診につなげる方法・家庭での関わり方についてアドバイスします。本人が認めない「否認」は依存症の特徴のひとつですが、ご家族がどう関わるかによって状況が変わることがあります。焦らず、まずはご相談ください。
- 入院は必要ですか?
- 離脱症状の程度や外来での治療経過によって判断します。重篤な離脱症状が予想される場合や、外来では回復が難しい場合は入院が有効です。ただし、依存症では、離脱症状や重篤な精神症状などを認めない場合、原則として本人の同意を伴わない、いわゆる「非自発的入院」の適応にはなりません。このため、ご家族が希望された場合でも、入院の適応にならないことが少なくありません。まずは外来での診察からご相談ください。
- 自助グループへの参加は必須ですか?
- 必須ではありませんが、同じ体験を持つ仲間とのつながりは長期的な回復に非常に効果的とされています。「怖い」「恥ずかしい」という方にも、精神保健福祉士が参加への橋渡しをします。悩んだり治療がうまくいかなくなったりしたときにも、同じ経験を持つ仲間との出会いが、回復の大きな力になります。
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