別名:認知症疾患
認知症は、脳の病気や障害によって記憶・判断力・言語などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。吉川市の中村病院では、精神科専門医による認知症の診断・治療を行っており、認知症ユニットを備えた入院施設も整えています。「最近物忘れがひどくなった」「同じことを何度も聞く」「財布を盗まれたと言い張る」といったことが気になる方は、早めにご相談ください。
当院の認知症における特徴
認知症専門の検査と精神科専門医による診断
当院では認知症の診断に際して、長谷川式認知症スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などの認知機能検査を実施しています。精神科専門医が問診・検査・生活状況の把握を総合的に行い、認知症の有無・種類・重症度を評価します。
「物忘れが増えてきた」「認知症かどうか確認したい」という方も、まずはお気軽にご相談ください。加齢による自然な物忘れとの鑑別も含め、丁寧に診察します。また必要に応じて、血液検査、画像検査(他院との連携)も行います。早期発見・早期治療が、症状の進行を遅らせるためにとても重要です。
認知症ユニットを備えた入院病棟
当院の3階病棟には認知症ユニットが設けられており、認知症の入院患者さまに対して専門的な看護・リハビリを行っています。認知症の周辺症状(BPSD)が強く、在宅での生活が難しくなった場合や、身体合併症が重なった場合にも対応できます。
入院中は医師・看護師・薬剤師・作業療法士・精神保健福祉士・管理栄養士など多職種チームが連携し、患者さまの安全と生活の質を守りながら療養環境を整えます。
退院後もグループ全体でつながる支援体制
認知症の治療は入院で終わりではなく、退院後の在宅生活や施設生活への移行が重要です。中村病院グループの訪問看護、介護老人保健施設ケアリングよしかわや居宅介護支援事業所よしかわと連携することで、退院後の生活支援・介護サービスへのつなぎをスムーズに行うことができます。
「退院後どこに戻ればいいかわからない」「介護が必要になってきた」という場合も、精神保健福祉士が相談に乗ります。住まいのこと・介護のこと・制度のことなど、幅広い相談に対応していますので、お気軽にお声がけください。
認知症とは
認知症では、脳の細胞が死んだり働きが低下したりします。これにより、一度発達した記憶・判断力・言語・見当識などの認知機能が、後天的に持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態の総称です。
認知症は、一般的にご高齢の方に多くみられますが、若年性認知症(64歳以下での発症)も存在します。認知症は単一の病気ではなく、様々な原因によって引き起こされます。症状や進行のスピードは原因によって異なります。「物忘れ」だけが認知症の症状ではなく、性格の変化・行動の問題・抑うつ・幻覚・神経症状など様々な形で現れることがあります。
認知症の症状
認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」に分けられます。
中核症状は脳の障害によって直接起こる症状です。記憶障害(特に最近のことを忘れる)、見当識障害(日時・場所・人の判別が難しくなる)、判断力・理解力の低下、言語障害(言葉が出にくい・理解しにくい)、実行機能障害(手順を考えて行動することが難しくなる)などが含まれます。
周辺症状(認知症の行動・心理症状;BPSD)は中核症状に加えて現れる行動・心理症状です。「財布を盗まれた」などの物盗られ妄想、昼夜逆転・不眠、徘徊、興奮・暴言、抑うつ、幻覚(特にレビー小体型認知症)などが代表的です。これらの症状はご家族が対応に困ることが多く、入院が必要になる大きな要因のひとつです。BPSDは適切な治療によって改善できることも多い症状で、専門医の指導による対応一つで劇的に改善することもあります。しかし、一般的な物忘れ外来では対応が難しい場合も多く、激しいBPSDになると認知症病院でも対応が難しい場合もあります。こういった場合でも精神科専門医による治療を受けることで改善できる場合もあるため、「もうどうしようもない」と諦めずにご相談ください。
認知症の原因・種類
認知症の主な種類として、アルツハイマー型認知症(最も多く、記憶障害から始まりゆっくり進行)、血管性認知症(脳梗塞・脳出血が原因、症状が階段状に悪化することがある)、レビー小体型認知症(幻視・パーキンソン症状・認知機能の変動が特徴)、前頭側頭型認知症(性格変化・行動の問題が目立つ)などがあります。
種類によって治療方針が異なるため、正確な鑑別診断が重要です。同じ「認知症」でも、適切な治療薬や対応方法は原因によって変わります。
認知症の診断
当院では、問診・認知機能検査(長谷川式・MMSEなど)・生活状況の確認をもとに診断を行います。必要に応じて血液検査や画像検査(他院との連携)を行い、原因となっている疾患の特定や、治療可能な認知症(甲状腺機能低下症・ビタミン欠乏など)の除外も行います。
初診時には、本人だけでなくご家族も同席していただき、日常生活の変化・症状が始まった時期・生活状況などを詳しくお聞きすることが重要です。本人が「病院には行きたくない」という場合でも、まずはご家族だけでの相談から始めることができます。
認知症の治療
認知症の根本的な治療薬は現時点では限られていますが、症状の進行を遅らせる薬(コリンエステラーゼ阻害薬・NMDA受容体拮抗薬)の使用が可能です。BPSDに対しては、抗精神病薬・抗うつ薬・気分安定薬・睡眠薬などを慎重に使用します。
認知症治療で難しいことの一つに服薬管理の問題があります。「忘れてしまう」病気である認知症の患者さまは、当然薬を飲むことも忘れてしまうからです。このため、本人任せにして飲み忘れが多くなり、結果的に周囲が飲み忘れていることを叱責してしまうことがあります。こうならないためにも、「認知症だから薬は飲み忘れるかもしれない」という前提で、自尊心を傷つけないように対策を考えることが大切です。当院では、ご家族が関わりを持つことが難しい独居の方であっても、訪問看護や介護老人保健施設を有効活用し、グループ全体でこの問題に関わることができます。
電気けいれん療法(ECT)は、レビー小体型認知症やパーキンソン病に伴う重篤な精神症状に対しても対応できる場合があります。ECTが必要な場合は、原則入院が必要となります。
薬物療法に加え、作業療法・デイケアなどのリハビリテーションを通じて、認知機能の維持と生活の質の向上を目指します。「何もできなくなってしまう」のではなく、できることを維持しながら、その方らしい生活を続けることを目標にします。
入院が必要になる場合
BPSDが強く在宅での生活・介護が困難になっている場合。徘徊・興奮・暴力などで安全が確保できない場合。身体合併症(肺炎・骨折・脱水など)が重なった場合。服薬管理ができなくなっている場合。ご家族が介護疲労で限界を迎えている場合。これらに該当する場合は入院治療が必要と判断されます。
入院についてのご相談は医療福祉相談室で受け付けています。
ご家族へのお願い
認知症の方の介護は、ご家族にとって精神的・体力的に非常に大きな負担となります。「怒らないようにしなければ」「自分が我慢すればいい」と抱え込まずに、ぜひ当院にご相談ください。
介護疲れは誰にでも起きます。ご家族が倒れてしまう前に、医療・介護サービスを上手に活用することが、患者さまとご家族の双方の生活を守ることにつながります。「もう限界かもしれない」と感じたら、それ以上我慢せずに声に出してください。当院のスタッフが一緒に考えます。
ご家族が対応に疲弊した場合や、ご家族の余暇を楽しむため、短期間のみお預かりする「レスパイト入院」という方法もあります。
よくある質問
- 物忘れが多くなってきました。認知症でしょうか?
- 加齢による物忘れと認知症の物忘れは、専門的な検査によって区別することができます。加齢による物忘れは「体験の一部を忘れる」「ヒントがあれば思い出せる」ことが多いのに対し、認知症では「体験そのものを忘れてしまう」という傾向があります。気になる場合は、ぜひ一度診察を受けてください。
- 認知症は治りますか?
- 現時点では、多くの認知症を根本から「治す」薬はありません。ただし、症状の進行を遅らせる薬や、BPSDを和らげる薬があり、適切な治療によって生活の質を維持することができます。一部の認知症(甲状腺機能低下症などが原因の場合)は治療によって改善することもあります。また、認知症と考えていた症状が、認知症以外の疾患によって引き起こされている場合もあり、早急な治療を要することもあります。安易に認知症と判断するのではなく、正しい診断を受けることが大切です。
- 家族が「財布を盗まれた」と繰り返し言います。どうすればよいですか?
- 物盗られ妄想は認知症のBPSDの一つです。ご本人は自分で財布をしまったり置いたりした記憶がなくなり、なくなった記憶を「財布を盗まれた」と解釈することで埋めている状態です。ご本人からすれば、非常に不安で憤りの強い状態であることが想像できます。肯定する必要はありませんが、否定して議論するよりも、本人の気持ちに寄り添いながら穏やかに対応することが大切です。対応に困っている場合は、専門医にご相談ください。
- 本人が受診を嫌がります。連れてくる方法はありますか?
- ご家族だけでのご相談も可能です。受診を勧める方法や、診察への連れ出し方についてアドバイスいたします。嘘をつくことは倫理的にも今後の信頼関係のためにもできる限り避ける必要がありますが、「健康診断のため」など、受診の理由をわかりやすく説明することが有効な場合もあります。
- 介護保険はどのように申請すればよいですか?
- 介護保険の申請はお住まいの市区町村窓口で行います。当院では診断書の発行や、精神保健福祉士による申請手続きのご案内が可能です。また、グループ内の居宅介護支援事業所よしかわでは、その後の生活や介護の方向性を計画するケアプランの作成までを一貫して対応できます。まずはご相談ください。
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